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収益不動産の相続税評価額とは?1棟アパート・マンションの計算方法と注意点

所有しているアパートやマンションを引き継がせる予定があると、「相続税がどれくらいかかるか」は早めに確認しておきたいところです。

「路線価をもとに計算される」という話は知っていても、賃貸物件の場合の計算方法や住宅との違いは、意外と把握しにくいものです。

収益物件(アパート・1棟マンション)の相続税評価には、通常の住宅とは別の仕組みがあります。

土地は「貸家建付地」として扱われ、入居者がいる分だけ評価額が低くなります。

たとえば借地権割合70%の都市部で満室経営なら、土地の評価額だけで約21%圧縮されるケースがあります(借地権割合・賃貸割合によって圧縮幅は変わります)。

建物も賃貸中であれば、同じ仕組みで評価額が下がります。

この仕組みを把握しておくと、税理士への相談内容も具体的になります。

本記事は、収益物件・事業用不動産の仲介を専門とする立場から、計算の仕組みを実務的に整理しています。税額の確定や節税判断は税理士の領域ですので、あくまで参考情報としてご活用ください。

この記事でわかること
  • 路線価方式による土地評価の計算手順
  • アパート・1棟マンション(貸家建付地)の評価計算の仕組み
  • 小規模宅地等の特例が収益物件で使える条件
  • 評価額を把握した後に取れる選択肢(生前売却・相続対策)

相続税評価額とは:相続税・贈与税を計算するための基準となる価格のこと

簡単にいうと、「税金を計算するときに使う、国が決めた不動産の価格」です。

国税庁が定めたルール(財産評価基本通達)に基づいて算出するもので、実際の売却価格(時価・市場価格)とは別物です。

不動産は換金するまでに時間と費用がかかります。

売却価格の全額を相続税の計算基準にすると実態より負担が重くなるため、国が一定のルールで評価額を算出する仕組みになっています。

アパートや1棟マンションなどの収益物件は、賃貸中という事実が評価額をさらに下げる要素になります。

入居者がいると、オーナーは「すぐに売れない・自由に使えない」という制約を受けます。その制約分だけ評価額が低く算出される仕組みです。

相続税評価額はなぜ市場価格より低い?2つの理由

相続税評価額は、実際の売却価格(時価)より低くなるのが一般的です。

「想定より相続税の負担が小さかった」という方も少なくありません。

評価額が時価より低い理由は、大きく2つあります。

評価の基準になる数値が年1回しか更新されない

土地の相続税評価には、国税庁が毎年7月に公表する「路線価」という基準値を使います。

路線価とは、道路(路線)に面した土地の1㎡あたりの価格を国が定めたもので、いわば「税金計算用の土地の値段表」です。

この路線価は年1回しか更新されないため、年間を通じて地価が上がっても評価額にはすぐ反映されません。

この時間差を見込んで、評価額は時価より低めに設定されています。

不動産は現金化までに時間とコストがかかる

不動産はすぐに現金化できるわけではなく、売却まで数ヶ月かかることが多く、仲介手数料等の費用も発生します。

すぐに現金化できない分を考慮して、評価額が低めに設定されています。

この2つの理由から、時価・相続税評価額・固定資産税評価額の比率は概ね次のようになります。

国が公表する「公示価格(土地の公的な基準値)」を100としたとき、それぞれの評価がどのくらいの水準になるかを示しています。

評価の種類 公示価格を100とした場合の目安
時価(実勢価格) 100〜120程度
相続税評価額(路線価) 約80
固定資産税評価額 約70

たとえば公示価格が1億円の土地なら、相続税の計算に使う評価額は約8,000万円、固定資産税の計算には約7,000万円が使われるイメージです。

相続税評価額の計算には、主に以下の書類を使います。

  • 路線価図・評価倍率表(国税庁が毎年7月公表)
  • 固定資産税・都市計画税の納税通知書(課税明細書)

土地の評価方法:路線価があるかどうかで使う計算式が変わる

土地の評価方式は、路線価が設定されているかどうかで決まります。

路線価が設定されている都市部・市街地では路線価方式を使います(設定されていない地域では別の計算方式が適用されます)。

建物は土地の方式に関係なく、固定資産税評価額がそのまま評価額になります。

ご自身の物件がどちらの地域かは、国税庁の路線価図で調べられます。

都市部・市街地の計算手順

路線価は公示地価の約80%水準を目安に設定されており、路線価図には「300C」のように数字とアルファベットが記載されています。

数字が路線価(千円単位)、アルファベットが借地権割合を示しています。

「300」であれば300千円=30万円/㎡です。

計算式は次のとおりです。

土地の相続税評価額 = 路線価(円/㎡)× 補正率 × 地積(㎡)

計算例:路線価30万円/㎡ × 補正率1.0 × 500㎡ = 1億5,000万円

補正率には、土地の形状による調整があります。

奥行が一般的な宅地より長い・短い場合の奥行価格補正率、L字形・三角形等不整形な土地の不整形地補正率、2方向の道路に面する角地の側方路線影響加算率等があります。

補正率の計算は複雑になるため、詳細な試算は税理士への依頼が現実的です。

なお、路線価は「相続開始の年(被相続人が亡くなった年)」のものを使います。

混同しやすいのが、「路線価(相続税評価)」と「固定資産税評価額」の違いです。

路線価は公示地価の約80%水準、固定資産税評価額は公示地価の約70%水準と、別々の指標です。

路線価の数字をそのまま固定資産税の計算に使ったり、逆に固定資産税評価額で相続税を試算したりすると、金額がずれてしまいます。

建物の評価額は土地と別に計算:固定資産税評価額がそのまま評価額になる

建物の相続税評価額は、固定資産税評価額をそのまま使います。

補正も倍率もありません。

建物の相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 1.0

固定資産税評価額は、土地と同じく課税明細書で確認できます。

土地とは別行で記載されており、1棟マンション(区分所有でない場合)であれば建物全体の評価額が記載されています。

建物の固定資産税評価額は一般的に再建築費の60〜70%程度とされており、時価より低くなるのが通常です。

古くなるほど評価は下がりますが、耐用年数を過ぎた建物でもゼロにはなりません。

覚えておきたいのは、「建物の評価は路線価と全く関係ない」という点です。

賃貸中の土地・建物の評価額はどう計算するか

貸家建付地(土地):入居者の借家権を考慮して評価額が圧縮される仕組み

「貸家建付地」とは、自分が所有する土地の上に賃貸用の建物が建ち、第三者が入居している状態の土地のことです。

自分で使っている土地(自用地)と比べると、入居者が持つ借家権の分だけ所有者が自由に使える権利が制限されるため、評価額が低くなります。

計算式は次のとおりです。

貸家建付地の評価額 = 自用地評価額 × (1 – 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

各用語の説明です。

  • 借地権割合:路線価図のアルファベット(A=90%〜G=30%)で確認。都市部は60〜70%が多い
  • 借家権割合:全国一律30%
  • 賃貸割合:入居中の床面積÷全床面積。満室なら100%、空室があれば100%未満

以下は自用地評価額1億円・借地権割合70%の物件での計算例です。

計算例①:満室(賃貸割合100%)

1億円 × (1 – 70% × 30% × 100%) = 1億円 × 0.79 = 7,900万円(2,100万円の圧縮)

計算例②:空室あり(賃貸割合80%)

1億円 × (1 – 70% × 30% × 80%) = 1億円 × 0.832 = 8,320万円(1,680万円の圧縮)

空室が増えるほど評価圧縮の効果は小さくなります。

「満室経営が評価額の観点からも有利」というのは、この計算の仕組みによるものです。

なお、退去直後から新たな入居者を募集している一時的な空室は、賃貸中として扱える場合もあります(条件あり)。

貸家(建物):賃貸中は固定資産税評価額から借家権割合30%が差し引かれる

入居者に貸している建物は「貸家」として評価され、固定資産税評価額から借家権割合分が差し引かれます。

貸家の評価額 = 固定資産税評価額 × (1 – 借家権割合 × 賃貸割合)

借家権割合は全国一律30%です。

以下は固定資産税評価額3,000万円の建物での計算例です。

計算例①:満室(賃貸割合100%)

3,000万円 × (1 – 30% × 100%) = 3,000万円 × 0.7 = 2,100万円(900万円の圧縮)

計算例②:空室あり(賃貸割合80%)

3,000万円 × (1 – 30% × 80%) = 3,000万円 × 0.76 = 2,280万円(720万円の圧縮)

空室がある部屋については借家権割合の控除が適用されないため、評価圧縮の効果が下がります。

入居率の管理が評価額に直接影響するのは、こうした仕組みによるものです。

1棟マンションの計算例:土地1億円・建物3,000万円のケースで試算する

前の2つのセクションで説明した方式を使って、1つの物件で計算の流れを通してみます。

前提条件
  • 物件タイプ:1棟マンション
  • 土地の自用地評価額:1億円
  • 借地権割合:70%(路線価図C地域)
  • 建物の固定資産税評価額:3,000万円
  • 賃貸割合:100%(全室満室)

ステップ①:土地評価(貸家建付地)

1億円 × (1 – 70% × 30% × 100%) = 1億円 × 0.79 = 7,900万円

ステップ②:建物評価(貸家)

3,000万円 × (1 – 30% × 100%) = 3,000万円 × 0.7 = 2,100万円

ステップ③:合計評価額

7,900万円 + 2,100万円 = 1億円

仮に土地・建物の取得費の合計が1億3,000万円だとすれば、相続税評価額は1億円と、取得費から見て23%程度の圧縮が生じています。

この試算はあくまで参考です。実際の評価額を確定するには、正確な補正率・賃貸割合・固定資産税評価額が必要になります。

2026年時点の2つの注意事項

計算の仕組みは基本的に変わっていませんが、近年のルール改正と最高裁判決を踏まえた注意点が2つあります。

令和6(2024)年1月以降の「区分所有補正率」

分譲マンションの1室(居住用の区分所有財産)には新しい評価方法が導入され、評価額が上がることがあります。

1棟丸ごとの賃貸マンション・アパートは対象外のため、この記事を読んでいる方には直接影響しません。ただし、区分所有の物件も併せて保有している場合は注意が必要です。

相続直前の物件購入リスク

「評価額を下げるために相続直前に収益物件を購入する」という節税策に対し、令和4年4月の最高裁判決では通達による評価ではなく時価評価が適用されました。

路線価ベースの評価が認められず、節税効果が実質ゼロになることもあります。

「相続対策として今から物件を買う」という検討をしている方は、必ず事前に税理士へ相談してください。

小規模宅地等の特例:収益物件の敷地に使える貸付事業用宅地等の条件と注意点

小規模宅地等の特例は、一定の条件を満たす土地の相続税評価額を大きく下げられる制度です。

賃貸アパート・マンションの敷地には「貸付事業用宅地等」が該当します。

3種類の区分を以下の表で整理します。

区分 対象 上限面積 減額率
特定居住用宅地等 居住用(自宅) 330㎡ 80%
特定事業用宅地等 自身が事業に使う土地(貸付事業以外) 400㎡ 80%
貸付事業用宅地等 賃貸物件(アパート・マンション等)の敷地 200㎡ 50%

数字だけ見ると「居住用の80%減に比べて50%減では不利」と感じるかもしれません。

しかし収益物件の土地は、貸家建付地評価によって相続税評価額がすでに下がっています(例:1億円→7,900万円)。

この上に小規模宅地等の特例が使えるため、一般住宅より相続税負担が低くなることも少なくありません。

「貸付事業用宅地等」の対象となる主な用途
  • 賃貸アパート・賃貸マンション・貸駐車場(アスファルト舗装あり)等の敷地
  • 更地・青空駐車場(舗装なし)は対象外
もっとも注意したい「3年縛り」(平成30年度税制改正)

相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地は、原則として貸付事業用宅地等から除外されます。

亡くなる直前に賃貸物件を購入して相続税を節税しようとする行為を防ぐための規定です。

ただし、相続開始の時点まで3年を超えて引き続き「特定貸付事業」(概ね5棟10室以上の事業的規模)を行っていた場合は、3年以内に取得した物件でも適用できる可能性があります。

なお、この特例を使うには相続税の申告が必要です。申告期限(相続開始後10か月)までに貸付事業を引き継いで継続し、申告期限まで宅地等を保有し続けることが条件で、申告書への記載と必要書類の添付も求められます。

計算例

前のセクションで計算した貸家建付地評価後の土地7,900万円の200㎡部分に50%の特例を適用すると、次のようになります。

7,900万円 × 50% = 3,950万円(200㎡以内の部分に対して)

土地の地積が200㎡を超える部分には特例が適用されません。また、複数の特例を組み合わせる場合は限度面積の計算が変わります。

評価額がわかった後の動き方:3つのケース別アクション

相続税評価額の計算方法が分かったら、それをもとに何をするかが次のステップです。

評価額を把握するだけでは、実際の相続対策は動きません。

よくある3つの状況に応じて、次のアクションの目安を整理します。

  • 相続まで時間がある・まず概算を知りたい → 試算結果を持って税理士へ相談
  • 相続人が管理を望んでいない・売却を考えている → 不動産会社に市場価格を確認
  • 相続が5年以内・節税対策も含めて検討したい → 税理士と不動産会社の両方に相談

相続まで時間があるなら:まず税理士に試算を相談する

相続税は「相続税評価額の合計 − 基礎控除額」がプラスになった場合にのみ発生します。基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で、誰でも使える控除です(例:配偶者と子2人なら4,800万円)。

評価額の概算が出たら、税理士に「基礎控除との差額がどのくらいか」を確認してもらうと、相続税がかかるかどうかの目安がつきます。

相続人が収益物件の管理を引き継ぐ予定なら、貸家建付地評価・小規模宅地等の特例を組み合わせた場合の試算も相談できます。

相続が具体化する前から動いておくと、選択肢が多い段階で判断できます。

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売却を検討しているなら:不動産会社に市場価格を確認する

相続税評価額(路線価ベース)と、実際の売却価格(市場価格)は別物です。

評価額が低くても、収益物件としての実力(利回り・稼働状況・立地)によっては市場価格が高いこともあります。

「いくらで売れるか」は評価額の計算だけでは分かりません。

売却のタイミングと価格の判断は不動産会社が担う領域です。

T-ESTATEでは収益物件・事業用不動産の売却を専門に扱っており、評価額の確認段階から市場価格の把握・売却戦略の検討まで対応しています。

なお、相続した不動産を売却した際の税金(譲渡所得税・住民税(個人))の計算については、別の記事で詳しく解説しています。

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「税理士(税額・節税の判断)」と「不動産会社(売却価格・売却の進め方)」は窓口を分けて動くと、判断が整理しやすくなります。

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まとめ:相続税評価額を把握したら、次の判断へ動こう

収益物件(アパート・1棟マンション)の相続税評価額は、土地と建物それぞれの計算式で求め、合算します。

土地は「貸家建付地」として、建物は「貸家」として評価されるため、入居者がいる分だけ評価額が低くなるのが特徴です。

満室経営であれば、その圧縮効果は最大になります。

この記事のポイント
  • 相続税評価額は実際の売却価格より低く、税金計算専用の価格
  • 賃貸中のアパート・マンションは、入居者がいる分だけさらに評価額が下がる
  • 満室経営ほど評価額の圧縮効果が大きく、空室が増えると効果は小さくなる
  • 小規模宅地等の特例を使えば、土地の評価額をさらに最大50%下げられる(条件あり)
  • 評価額の把握は、税理士への相談や売却判断の入口になる

評価額の計算方法が分かると、「相続税が基礎控除を超えるかどうか」の目安がつき、税理士への相談内容も具体的になります。

「まだ相続は先の話」と感じていても、評価額を確認しておくことで、生前売却・贈与・現状維持のどの選択肢を検討すべきかが見えてきます。

相続税の試算と節税判断は税理士に、売却価格・タイミングの判断は不動産会社にと、窓口を分けて進めると整理しやすくなります。

T-ESTATEは名古屋エリアで収益物件・事業用不動産に特化した専門会社として、評価額の確認段階からご相談に対応しています。

まず現状を整理したいという段階から、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人
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佐々木 英人(不動産仲介事業部 営業)

名古屋エリアを中心に、収益物件・事業用不動産(1棟アパート・1棟マンション・ビル・事業用地など)の売買仲介と、貸店舗・事務所など事業用不動産の賃貸仲介を担当。賃料10万円規模の賃貸から10億円超の売買まで幅広い仲介実績を持ち、不動産管理の経験も踏まえた多角的な提案を強みとする。物件状況やご意向に応じて、出口戦略まで見据えた利益最大化の提案を行う。
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