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相続した不動産を売るときの税金はいくら?賃貸・収益物件は節税が限られる理由と対策

相続した収益物件・事業用不動産を売却すると、譲渡所得税がかかります。譲渡所得税とは、不動産を売って得た利益(譲渡所得)にかかる所得税のことです。

税率の目安は利益の約20%(長期保有の場合)ですが、節税できる制度は居住用不動産と大きく異なります。

空き家特例もマイホーム特例も、生前に賃貸に出していた物件には使えません。

「親から相続した賃貸マンションを売りたい。税金がいくらかかるかを、売る前に把握しておきたい」。そうした方に向けて、収益物件・事業用不動産に特化した売却時の税金の仕組みと、使える節税制度を整理します。

この記事でわかること
  • 売却益にかかる税率の目安と計算式の基本
  • 空き家特例・マイホーム特例が収益物件に使えない理由
  • 取得費加算特例の条件と3年10ヶ月の期限
  • 賃貸物件の取得費は減価償却で圧縮される
  • 売る前後の3つの手続き(相続登記・書類・確定申告)

相続した収益物件・事業用不動産を売ったときの税金はいくらかかる?

積み上げられたコインの上に『TAX』の木製ブロックを置く手と、その隣に並ぶ住宅のミニチュア

相続した不動産を売ると、どんな税金がかかるのでしょうか。

まず押さえておきたいのは、売った金額全体に税金がかかるのではなく、「利益(売却益)」だけが課税対象になるという仕組みです。

なお、相続のときにかかる相続税と、売ったときにかかる譲渡所得税は、別々に発生する税金です。

「相続税を払ったから、売っても税金はかからない」という誤解は多いため、最初に確認しておきます。

税金の目安は「利益の約20%」:長期保有で税率は抑えられる

長期保有(5年超)の場合、税金の目安は利益の約20%です。

3,000万円で売っても、3,000万円全体に税金がかかるわけではありません。

売却価格から「もともとかかった費用」を引いた利益に対してのみ、課税されます。

計算の流れはこうです。

  1. 売却価格(収入金額)
  2. 取得費を引く(購入代金+仲介手数料・登記費用など)
  3. 譲渡費用を引く(仲介手数料・測量費・解体費など)
  4. これを引いて残ったものが 課税譲渡所得=実際に税金がかかる「利益」
  5. この利益 × 約20%(5年超保有の場合)= 税額の目安

ここでの「取得費」は不動産を取得するときにかかった費用(購入代金や仲介手数料、登記費用など)です。

「譲渡費用」は売るために直接かかった費用で、仲介手数料・測量費・解体費などが当てはまります。

取得費の書類(売買契約書など)が残っていない場合の救済措置として、「売却額の5%を取得費とみなせる概算取得費ルール」があります。

先祖代々の土地など書類が残っていないケースでも計算できますが、実際の取得費より低くなることが多く、必ずしも有利とはなりません。

ただし、この「約20%」は5年超保有の場合の数字です。

相続した物件の所有期間の数え方には注意点があり、次で解説します。

税率は被相続人(亡くなった方)が取得した日からの年数で決まる

税率は「5年以下(短期)か5年超(長期)か」で、約2倍変わります

区分 所有期間(1月1日時点) 所得税(復興税含む) 住民税 合計
短期譲渡所得 5年以下 30.63% 9% 約39.63%
長期譲渡所得 5年超 15.315% 5% 約20.315%

よく見落とされるポイントがあります。

相続した不動産の所有期間は、「相続した日」からではなく、「被相続人が取得した日」から数えます

親が30年前に購入した賃貸アパートを相続した場合、相続した翌日に売っても「30年超の長期保有」として扱われます。

名義変更(相続登記)した日ではなく、被相続人の取得日がそのまま引き継がれます。これは国税庁のルールで定められています。

所有期間の判定は「売却した年の1月1日時点」で行います。

実際の保有期間が5年を超えていても、1月1日時点で5年以下なら「短期」扱いになる点にも注意が必要です。

相続した収益物件は被相続人が長年保有していたケースが多く、相続後すぐに売っても長期扱いになることがほとんどです。

ただし、所有期間が短い場合は税率が2倍近く変わるため、事前の確認は欠かせません。

手元にいくら残る?諸費用込みの手取り額シミュレーション

税金だけでなく、売却時の諸費用も引いて初めて「手取り額」がわかります。

主な諸費用の目安は以下のとおりです。

費用項目 内容・目安
仲介手数料 売却価格×3%+6万円+消費税(法定上限)
印紙税 1,000万超5,000万以下:1万円、5,000万超1億以下:3万円
登録免許税 固定資産税評価額×2%(所有権移転登記)
抵当権抹消費用 司法書士報酬込みで1〜2万円前後が目安

賃貸物件では、毎年の確定申告で「建物の老朽化分」を経費(減価償却費)として計上してきた累計分だけ、売却時の取得費が下がります

たとえばRC造の建物を3,000万円で購入し、20年間賃貸に使ってきたとします。

減価償却の対象は建物のみです。土地は年数が経っても価値が下がらないため、減価償却の計算には含まれません。この例は建物部分のみを想定しています。

3,000万円(建物購入価格)× 0.022(RC造の償却率)× 20年 = 1,320万円(減価償却の累計)

3,000万円 − 1,320万円 = 約1,680万円 が売却時の建物の取得費になります。

この場合、実際の手取りはいくらになるのか。以下のシミュレーションで確認できます。

シミュレーション(参考例)

RC造・建物購入価格3,000万円・20年間賃貸経営後、購入時と同じ3,000万円で売却した場合

取得費(減価償却後):3,000万円 − 1,320万円(20年分累計)= 1,680万円

  • 課税譲渡所得:3,000万 − 1,680万 − 100万(諸費用)= 1,220万円
  • 譲渡所得税(長期):1,220万 × 約20.315% ≒ 約248万円
  • 手取り概算:3,000万 − 100万 − 248万 ≒ 約2,652万円

値段が変わっていなくても、減価償却の分だけ税金が発生します。

節税制度を活用できれば手取り額は大きく変わります。

次のセクションで、収益物件で使える制度と使えない制度を整理します。

※ 上記は参考例です。詳細は税理士にご確認ください。

収益物件の相続売却で節税できる制度は?

「節税対策」と書かれた吹き出し型のカードを中心に、白い家のオブジェ、虫眼鏡、電卓、ペンが並ぶデスクの上

相続した収益物件を売る場合、使える節税制度は限られています。

「居住用の実家と同じ制度が使えると思っていた」という誤解が起きやすい領域でもあります。

使える制度・使えない制度をはっきりと整理します。

相続した収益物件で使いやすい節税手段「取得費加算特例」

相続した収益物件で、多くのケースで使いやすい節税手段は取得費加算特例です。

取得費加算特例とは、相続した不動産を売却するときに「支払った相続税の一部を取得費に加算できる」制度です。

取得費が増えれば課税対象の利益が減り、譲渡所得税が軽減されます。

適用には3つの要件をすべて満たす必要があります。

  • 相続・遺贈により財産を取得した者であること
  • その財産に対して相続税が課税されていること(相続税を払っていること)
  • 相続開始の翌日から相続税申告期限の翌日以後3年以内(相続開始から3年10ヶ月以内)に売却すること

「3年10ヶ月」の根拠は、相続税の申告期限(亡くなってから10ヶ月)に、その翌日から3年を加えた期間です。

カウントは「亡くなった日」から始まります。

相続登記が完了した日ではありません。

「名義変更が済んでから売却を考えよう」と思っていると、気づかないうちに期限が近づいているケースがあります。

収益物件は評価額が高くなりがちで、相続税の負担も大きくなる傾向があります。

支払った相続税が大きいほど加算できる金額も大きくなり、節税効果が期待できます。

参考例:譲渡所得の計算において、取得費に支払った相続税150万円を加算できる場合、結果として課税対象となる利益が800万円から650万円に減少します。

長期税率(約20.315%)を適用すると、約30万円の節税になります。

T-ESTATEでは、収益物件の売却仲介を専門とし、税理士とも連携しながら相談に対応しています。

「税金の試算は税理士に、売却の進め方はT-ESTATEに」という役割分担で、並行してご相談いただけます。

※ 取得費加算特例の詳細と個別の試算は税理士にご確認ください。

状況によっては他の節税手段も検討できる

取得費加算特例以外にも、物件の状況によって選択肢があります。

事業用資産の買換え特例

売却益を新たな事業用不動産の購入に充てることで、課税を将来に繰り延べる制度です。

免除ではなく繰り延べですが、手元資金への影響を抑えられる場合があります。

損益通算

同じ年に他の不動産売却で損失が出ている場合、売却益と相殺できます。複数の物件を持っている方に限られます。

どちらも適用条件が複雑なため、自分のケースに使えるかどうかは税理士への確認が必要です。

空き家特例・マイホーム特例が使えないのはなぜ?

「賃貸マンションを相続後、空き家になった状態で売った。だから空き家特例が使えるはず」と思っている方、実は使えません。

空き家特例(被相続人の居住用財産の特例、最大3,000万円控除)は、亡くなった方が生前に自宅として住んでいた家を相続して売る場合に使える制度です。

使える条件の大前提は「相続開始直前に、被相続人がその不動産に居住していたこと」です。

賃貸マンションやアパートは、被相続人が住んでいた自宅ではありません。そのため、相続後に空き家になっていたとしても、この前提条件を満たせず、制度の対象外になります。

「空き家になってから売れば使えるのでは」と思われがちですが、問題は相続後の状態ではなく、亡くなる前にその物件が自宅だったかどうかです。

マイホーム特例(居住用財産の3,000万円特別控除)も同様です。

「現在自分が住んでいる家を売る場合」に使える制度であり、相続した賃貸物件には当てはまりません。

なぜ収益物件にはこれらが使えないのかというと、税制は「居住用不動産を手放しやすくするための制度設計」になっているためです。

空き家問題の解消や、マイホームの流動性を高める目的で設けられており、収益目的で活用してきた不動産は対象外となっています。

収益物件では使えない制度を整理します。

  • マイホームの3,000万円特別控除 → 不可
  • 空き家特例の3,000万円控除 → 不可
  • 所有期間10年超の居住用財産の軽減税率特例 → 不可

このことを知らずに「節税できると思っていた」というケースは、収益物件の売却相談でよく聞かれます。

収益物件の売却方法・売却タイミングの選び方については、「収益物件売却で後悔しない」もあわせてご確認ください。

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ただし長年賃貸に使ってきた物件では、減価償却後の実際の取得費が5%をさらに下回るケースもあります。どちらが有利かは物件の状況によって異なるため、過去の確定申告書や減価償却明細書を税理士と一緒に確認しておくことをおすすめします。

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売却前後にやること3点:相続登記・書類確認・確定申告

青い背景に、白いチェックマークが描かれた3つの青い立方体ブロックが縦に並ぶチェックリストのイメージ

税金の仕組みと節税制度を理解したら、実際に何をすればよいかを確認しておきましょう。

売却の前後で、3つの見落とせない手続きがあります。

名義変更・書類確認・確定申告。この3点を時系列で押さえておくと、申告ミスと節税機会の喪失を防げます。

①相続登記をする:売却前に必須、3年以内の申請が義務

相続した不動産を売るには、まず名義変更(相続登記)が必要です。

亡くなった方の名義のままでは売却手続きが進められません。

2024年(令和6年)4月1日から、相続登記が法律上の義務になりました。

不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記申請をしなければ、正当な理由がない場合は10万円以下の過料(ペナルティ)の対象になります。

2024年以前に発生した相続も対象になっている点は見落とされがちです。

まだ名義変更が済んでいない方は、早めの対応が必要です。

相続登記の費用の目安は以下のとおりです。

  • 登録免許税:固定資産税評価額 × 0.4%
  • 司法書士報酬:数万〜十数万円(物件数・複雑度による)

取得費加算特例の3年10ヶ月の期限は「亡くなった日」から始まります。

「名義変更が済んでから考えよう」と後回しにしていると、特例の期限が来てしまうことがあります。

登記の完了と特例の期限は連動していません。

②書類を確認する:売却前に取得費計算に必要な書類を揃える

収益物件の取得費を正確に計算するには、賃貸経営期間中の書類が必要です。

売却を検討している段階で早めに確認しておきましょう。

取得費計算に必要な主な書類です。

書類 用途
購入時の売買契約書 建物・土地の取得価額の確認
過去の確定申告書 毎年の減価償却費の確認
減価償却明細書(青色申告決算書) 未償却残高(簿価)の確認
登記簿謄本 取得日・建物構造・面積の確認
相続税申告書の写し 取得費加算特例を使う場合に必要

これらの書類が見つからないと、正確な取得費が計算できず、税額が大きく変わる可能性があります。

購入時の書類がない場合は、当時の不動産会社や司法書士・金融機関に問い合わせることも一つの方法です。

書類の収集と取得費の試算は、売却が決まってからでは時間が足りないこともあります。

早い段階で税理士に相談しながら確認を進めることをおすすめします。

③確定申告をする:翌年3月15日までに申告しないと特例が使えない

取得費加算特例を使うには、必ず確定申告が必要です。

申告しなければ特例は適用されません。

確定申告の期間は、売却した翌年の2月16日〜3月15日です。

課税所得がゼロになる場合でも、申告は必要です。

特例を適用した結果、税額がゼロになったとしても、申告しなければ特例の適用そのものが認められません。

取得費加算特例には「当初申告要件」があります。

期限後申告では、後から「あの特例を使いたかった」と申し出ても、原則として認められません。

売却が決まった時点で、税理士への相談を始めることが欠かせません。

申告に必要な主な書類です。

  • 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
  • 売買契約書の写し(売却代金の確認)
  • 相続税申告書の写し(取得費加算特例を使う場合)

税務の詳細は税理士にご相談ください。

売却・確定申告・節税の流れを並行して進めるには、専門家との早めの連携が鍵になります。

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まとめ:収益物件の相続売却、税金と手続きの確認は早めに

収益物件・事業用不動産の相続売却では、使える節税制度が居住用とは大きく異なります。

空き家特例もマイホーム特例も使えず、多くのケースで使いやすい節税手段は取得費加算特例です。状況によっては事業用資産の買換え特例や損益通算なども検討できますが、適用条件が複雑なため税理士への確認が必要です。

この記事のポイント
  • 空き家特例・マイホーム特例は収益物件に適用されない
  • 多くのケースで使いやすい節税手段は取得費加算特例(相続税の支払いが前提条件)
  • 3年10ヶ月の期限のカウントは亡くなった日から始まる
  • 減価償却の累積で取得費が圧縮され手取りが減るケースがある
  • 取得費加算特例は確定申告しないと適用されない(当初申告要件あり)

「亡くなった日から3年10ヶ月」。この期限を意識して動けるかどうかが、最終的な手取りを左右します。

相続登記がまだ済んでいない方は義務化の観点からも早めに手続きを進めながら、並行して書類確認と税理士への相談を始めることをおすすめします。

取得費の計算や節税の試算は税理士に、売却の進め方はT-ESTATEに。

役割を分けて専門家に相談することで、見落としを防ぎながら売却を進められます。

T-ESTATEは名古屋エリアで収益物件・事業用不動産の売却仲介を専門とし、税理士とも連携して相談に対応しています。

「まず現状を整理したい」という段階からお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人
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川口 洋平(不動産仲介事業部)

名古屋エリアを中心に、収益物件・事業用不動産(1棟アパート・1棟マンション・ビル・事業用地等)の売買仲介、貸店舗・事務所等の賃貸仲介を担当。居住用・事業用賃貸仲介から、企業不動産の売買・賃貸・管理まで幅広く経験し、物件種別や稼働状況を問わない利活用提案・課題解決を強みとする。
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