投稿日:2026.03.30 最終更新日:2026.03.30
1棟築古マンションの5つのリスク|管理・耐震・融資・売却、判断基準を徹底整理
「管理委託費がじわじわ上がっている」「大規模修繕の費用が見通せない」「相続のことを考えると手放すべきか迷っている」。
1棟マンションを保有するオーナーから、こうした声をよく聞きます。
築30年以上の1棟マンションには、管理・設備・耐震・融資・売却という5つのリスクが潜んでいます。
区分マンションと異なり、1棟オーナーは建物全体の修繕・管理・空室の責任をすべて自分で負います。
費用もリスクも一人で抱える構造のため、築年数が進むにつれてリスクが積み重なりやすくなります。
鍵になるのは、修繕履歴・長期修繕計画書・管理会社との委託契約書の3つの書類です。
この3つの書類をチェックすれば、管理状態は購入前でも見極められます。
- 1棟マンションオーナーが直面する5つのリスク
- 管理状態を把握するための3つの書類と問題発見時の対処法
- 旧耐震基準物件が融資審査・税制優遇で不利になる理由
- 売却タイミングの見極め方と、手放す際の基本的な考え方
1棟築古マンションのリスクとは?保有者・購入検討者が知るべき基礎知識

1棟築古マンションとは、一般的に築30年以上の1棟収益物件を指します。
「修繕費が想定以上にかかった」「売りたいのに購入検討者が見つからない」「管理委託費が急に上がった」
こうした声は、1棟オーナーからよく聞かれます。
1棟保有の場合、外壁・屋上・配管・共用設備など建物全体の修繕コストをオーナーが一人で負担します。
空室が出れば収入が直接減り、修繕の原資も削られます。
修繕費や空室だけでなく、相続時にどう扱うかまで考える必要があるのが1棟保有の実態です。
1棟築古マンションには、次の5つの主要なリスクがあります。
- 管理リスク:修繕費用・管理委託費の高騰、管理会社の対応不備
- 設備の老朽化リスク:水漏れ・設備故障・高額な修繕費
- 耐震性リスク:旧耐震物件の倒壊リスク、融資・税制への影響
- 運営リスク:融資の難しさ、空室率の上昇による収支悪化
- 資産価値・売却リスク:価格の下落、売却の困難さ
過度に恐れる必要はありません。 正しく理解し、必要な手当てをしておけば、1棟築古物件でも安定した運営は十分に可能です。
以降では各リスクの内容と対策を順番に解説します。
管理リスク:修繕費用が増え続ける理由と管理会社の見極め方

まず重くのしかかるのが、管理コストの増加です。
1棟マンションでは区分マンションと異なり、外壁・屋上・配管・共用部すべての修繕コストをオーナーが一人で負担します。
修繕費用の積立が不十分だと、突発的な大規模修繕のたびに手元資金が一気に減ります。
築20年を超えると修繕費の負担が重くなる傾向があるため、購入時の費用感だけで判断するのは危険です。
管理会社への委託費も、物価水準の変化に伴い上昇する傾向があります。
適正水準を判断するには次の3点を確認するのが基本です。
- 過去の修繕履歴(何年周期でどんな修繕をしてきたか)
- 長期修繕計画の内容と積立額の整合性
- 管理委託費の相場(管理戸数やサービス範囲に応じた目安)
出典:長期修繕計画作成ガイドライン(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000027.html)
管理会社の対応が不十分だと、建物劣化と空室増の悪循環が始まる
1棟オーナーは管理会社に委託して建物管理を任せますが、その質が低いと建物全体の価値が損なわれます。
対応不備が招く主な問題は次の3つです。
- 清掃・点検の不備による建物劣化と空室増加
- 修繕の先送りによる将来的な修繕費の膨張
- 管理体制の崩壊から収益悪化・負動産化への連鎖
管理会社の対応が悪化した状態が続くと、入居者が離れ、収益が下がり、さらに管理費用を削らざるを得ない悪循環に陥ります。
こうした状態が続けば、売りたくても売れない「負動産」になりかねません。
管理リスクへの対策:3つの書類で現状を診断し、管理会社を見直す
管理リスクを軽減するには、問題が深刻になる前に現状の異常を見つけて手を打つことが基本です。
1棟物件では管理組合が存在しないため、管理状態の確認はオーナー自身が主体的に行う必要があります。
そのための出発点が、次の3つの書類です。
管理委託している場合、修繕履歴や長期修繕計画書は管理会社が保管しています。
オーナーとして定期的な開示を求める権利があります。
修繕履歴(記録)
修繕履歴を管理会社に定期的に開示させ、修繕の実施状況をオーナー自身で確認しましょう。
5年以上記録がない、または劣化が目立つのに修繕が行われていない場合は、修繕業者の見積もりを取り、実施の判断と承認はオーナー自身が行います。
管理会社が記録の開示や修繕手配に応じない場合は、管理会社の変更を検討しましょう。
長期修繕計画書
長期修繕計画書を管理会社に開示させ、「計画どおりに工事が実施されているか」「積立額と計画費用が合っているか」の2点をオーナー自身で確認しましょう。
積立が計画を大きく下回っている場合は、積立額の引き上げをオーナー自身が判断し、管理会社に計画の見直しを指示しましょう。
管理会社との委託契約書
委託契約書を手元に置き、委託範囲・費用・契約期間・解約条件の4点をオーナー自身で確認しましょう。
委託範囲が不十分、または費用が相場を大きく上回る場合は、管理会社と再交渉するか、管理会社の変更をオーナーとして判断します。
「解約に6ヶ月前の通知が必要」といった条件が入っていることもあるため、動く前に必ず解約条件を確認しておきましょう。
自主管理型オーナーが押さえるべきポイント
自主管理型のオーナーは、修繕記録・長期修繕計画・修繕積立の3つを自分で準備し、継続的に管理することが基本です。
管理会社がいない分、記録や計画が後回しになりがちですが、これらが整っていないと修繕タイミングを見逃し、気づいたときには大きな費用がかかる状態になっていることがあります。
業者との見積書・請求書・工事写真をまとめて保管する習慣をつけ、修繕計画は定期的に見直すようにしましょう。
管理体制の改善が難しく、収益悪化が続く場合は、売却という出口も現実的な手段のひとつです。
設備の老朽化リスク:見落としやすい設備と修繕費の実態

配管や電気設備は外から見えにくいため、購入時に見落としやすいポイントです。
1棟マンションでは設備更新の費用はすべてオーナー負担であり、漏水や設備故障が起きると修繕費が一気に膨らみます。
築30年以上で特に注意が必要な4つの設備
費用インパクトが大きく、見落としやすいのが次の4つです。
- 給排水管(配管)
- 電気配線・分電盤
- 外壁・防水層
- エレベーター・機械式駐車場
配管は築30年以上で劣化が進みやすく、壁や床の中を通るため見た目で状態を判断しにくい設備です。
気づかないまま放置すると漏水事故につながり、全戸一斉交換となれば数千万円規模の修繕費が発生します。
電気配線・分電盤は古い仕様のままだと漏電・火災のリスクがあり、電力容量不足につながることもあります。
更新を先送りすると入居者トラブルや最悪の場合は火災事故につながるため、築年数が進んだ物件では優先して確認したい設備です。
外壁・防水層はひび割れや劣化が進むと雨漏りの原因になります。
放置すると内部構造まで傷みが広がり、補修工事の規模が大きくなるほど費用負担も重くなります。
エレベーター・機械式駐車場は更新・修繕費が数百万〜千万円単位になることがあります。
故障が続くと入居者の不満につながり空室増加を招くため、更新時期が近い物件では積立計画への影響を事前に確認しておく必要があります。
配管更新が最大の費用リスク
1棟マンションで全戸一斉に交換する場合、数千万円規模になることがあります。この費用はすべてオーナー負担です。
費用差が出やすいのが配管形式です。
「スラブ下配管」は排水管が床スラブの下を通る形式で工事範囲が広がりやすく、更新費用も高くなる傾向があります。
一方「スラブ上配管」は比較的更新しやすく費用を抑えやすいとされます。
購入前に配管形式は必ず確認しておきましょう。
老朽化リスクへの対策:更新履歴の確認と保険の備え
老朽化リスクを下げる基本は「更新履歴の確認」です。
前回更新の時期・次回更新の予定・長期修繕計画書との整合性の3点を押さえ、更新から10年以上経過している設備があるなら近い将来に費用が発生する前提で資金計画を組みましょう。
漏水が起きると下階の入居者への賠償が発生する可能性があります。
個人賠償責任保険や火災保険の水漏れ特約で備えておくとよいでしょう。
ただし経年劣化そのものは補償対象外になることがあるため、加入前に補償内容を必ず確認してください。
更新費用が高額になる場合は、売却を出口として検討するのも現実的な選択です。
耐震性リスク:旧耐震物件が抱える倒壊・融資・税制の問題

1棟築古物件では、まず旧耐震かどうかを確認することが出発点です。
1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けた旧耐震物件は、地震時のリスクだけでなく、融資や税制でも不利になりやすい傾向があります。
旧耐震基準と新耐震基準:耐震性能の違いと倒壊リスク
旧耐震基準(1981年5月31日以前に建築確認)では「震度5程度の揺れでも倒壊・崩壊しない」ことが最低条件でした。
それを超える大地震への耐性は基準として明確に定められていませんでした。
新耐震基準では震度5強程度の地震であれば軽微なひび割れ程度にとどまり、震度6強〜7程度の大地震でも倒壊しない構造が求められています。
| 旧耐震基準 | 新耐震基準 | |
|---|---|---|
| 対象 | 1981年5月31日以前に建築確認を受けた建物 | 1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物 |
| 震度5程度の地震 | 倒壊・崩壊しないこと(最低条件) | 軽微なひび割れ程度にとどまる |
| 震度6強〜7の大地震 | 基準なし | 倒壊しない構造が必要 |
出典:住宅・建築物の耐震化について(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr_000043.html)
旧耐震物件は融資・税制の両面で不利になる
旧耐震物件は融資期間の短縮・金利上乗せ、場合によっては融資自体を断られることもあります。
1棟物件は購入検討者も投資家に限られるため、融資がつかない旧耐震物件は現金購入できる層のみが候補となり、売却先の選択肢が大幅に絞られます。
税制面では、耐震改修を行った場合に固定資産税の減額措置を受けられる制度がありますが、旧耐震のままでは対象外です。
また耐震性の低さから地震保険料が割高になることも多く、保有コスト全体に影響します。
旧耐震物件への対策:耐震診断の実施と費用対効果の見極め
耐震診断の費用は数十万〜数百万円程度で、補強が必要な場合の工事費は数百万円〜数千万円規模になることがあります。
耐震改修をしても立地や管理状態が弱ければ売却価格への上乗せは限定的なのが実情です。
「安全性を上げたいのか、売りやすくしたいのか」を分けて考えた上で費用対効果を慎重に判断しましょう。
購入前の確認ポイントは次の3点です。
- 建築確認日(1981年5月31日以前か)
- 耐震診断書の有無
- 耐震改修の実施履歴
改修費用が見合わないと判断した場合は、旧耐震のまま売却を検討する方が現実的なケースもあります。
旧耐震物件は融資・税制の両面で不利になりやすいため、購入時の資金計画にしっかり織り込んでおくことが重要です。
運営リスク:融資の難しさと空室による収支悪化

融資と空室の2つは、1棟マンションの収支を大きく左右します。
購入時に融資がつかなければ計画は崩れ、保有中に空室が続けば収支が悪化し管理や修繕に回す余力も減っていきます。
区分マンションであれば1戸分の損失ですが、1棟物件では空室が増えるほど収支の傷が深くなります。
築年数+融資期間が耐用年数を超えると、返済額が一気に増える
1棟中古マンションの融資審査では、多くの金融機関が「築年数+融資期間≦耐用年数」という制限を設けています。
鉄筋コンクリート造(RC造)の法定耐用年数は47年ですが、築30年以上では融資期間が大幅に短縮されるか審査が通りにくくなります。
たとえば築35年の物件では残り12年分の耐用年数しかないと判断されるため、融資期間は10〜12年程度に制限されることが多くなります。
融資期間が短ければ毎月の返済額が増え、築浅物件と同じ感覚で試算すると購入後に資金繰りが苦しくなる可能性があります。
旧耐震物件はさらに厳しく、融資期間の短縮・金利上乗せ、場合によっては融資拒否となることがあります。
リフォームローンも同様で、物件評価が低い場合は担保として認められにくく修繕資金を自己資金で対応しなければならないことも出てきます。
空室が増えると固定費だけが残り、管理不全の悪循環に陥りやすい
空室が増えると家賃収入が直接減ります。
周辺に新しいマンションが増えると設備の古さや間取りの使いにくさが目立ち、賃料設定が相場より高いままだと入居希望者が集まりにくくなります。
空室が増えると管理費・保険料・固定資産税はオーナー負担のまま家賃収入は入らず、次の悪循環が起きやすくなります。
- 収支悪化で修繕積立が不足する
- 修繕を先送りして建物劣化が進む
- さらに空室が増える
空室率の上昇は単なる収支問題にとどまらず、物件全体の価値を損なう問題です。
運営リスクへの対策:融資の事前確認と空室改善の見直し
融資への対策として、まず複数の金融機関に事前確認し現実的な資金計画を立てましょう。
自己資金比率を高めることが審査厳格化に対応する基本です。
空室への対策は、賃料を下げる前にまず募集写真・設備条件・管理会社の反響対応を見直すことが先決です。
家賃だけを下げるとその後の収益改善が難しくなります。
設備更新や内装リフォームで新築・築浅との差を縮め、ターゲット層を見直すと募集条件のずれに気づきやすくなります。
これらの手を尽くしても改善しない場合は、早めに売却という出口も考えておきましょう。
売却・資産価値リスク:負動産化を避けるために知っておくこと

いざ売りたいと思ったとき購入検討者がつかなかったら、それが「売れない・価値が下がる」リスクです。
特に相続や資金繰りの局面では「売れない」という状況が大きな問題につながります。
1棟築古マンションは、築年数が経過するほど資産価値が下落し売却が困難になる傾向があります。
さらに1棟物件は金額が大きいため購入検討者の絶対数が区分より少なく、融資がつかない場合は現金購入できる投資家に限られてしまいます。
購入検討者は「古さ」より「管理・修繕・旧耐震かどうか」で価格を判断する
購入検討者が気にするのは「古いこと」そのものより、古さに対して管理と修繕が追いついているかです。
修繕費用の積立が不足している物件ほど価格交渉は厳しくなります。
とりわけ1981年以前の旧耐震物件は融資審査が厳しくなります。
融資が下りない場合、購入検討者は現金購入が必要になり、売却活動が長期化しやすくなります。
「空室が続いている状態で売り出した」「大規模修繕の直前に手放そうとした」といったタイミングが価格をさらに引き下げる要因になります。
売れないまま管理委託費・税負担だけが膨らむ「負動産」の怖さ
売却できず、管理委託費・修繕費・固定資産税といった保有コストだけが膨らんでいく状態を「負動産化」と言います。
築古物件を相続させることで、子世代は「売りたくても売れない」「維持費だけがかかる」「兄弟間で意見が割れる」という問題を抱えることになります。
「子どもに迷惑をかけたくない」という思いがあるなら、売却の計画は「いつかのこと」ではなく、今から考えておくべきテーマです。
売却・資産価値への対策:大規模修繕前・管理体制が崩れる前が売り時
売却を検討するための目安として、以下を参考にしてください。
- 修繕費の累積が一定水準を超えた
- 空室率が上昇傾向にある
- 金融機関からの融資条件が厳しくなっている
- 相続を見据えたタイミングが近づいている
売却を検討する際は、収益物件・事業用不動産に特化した仲介会社に相談することをおすすめします。
T-ESTATEは名古屋エリアで収益物件・事業用不動産に特化した不動産会社です。
全国5,000件超の法人・投資家等の顧客ネットワークを活かし、築古物件や訳あり物件の売却にも対応しています。
1棟築古物件の売却方法を詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
築古の1棟マンション、本当に売れる?相場・売り方・注意点を専門家が解説
40年ほど運用してきた1棟マンション。 そろそろ手放す時期かもしれないと感じながら、「こんな古い物件、本当に売れるのか」と二の足を踏んでいる方もいるでしょう。 旧耐震基準で銀行融資がつきにくい、修繕積立金が不足している、管理資料が整っていない。 売れにくいと言われる背景には、確かにこうした理由
まとめ:5つのリスクを早めに把握し、売却タイミングを逃さない
1棟築古マンションのリスクは、管理・設備・耐震・融資・売却の5つです。
5つのリスクは互いに影響し合うことも多く、早めに状況を把握しておくほど取れる手が多くなります。
- 管理状態は修繕履歴・計画書・委託契約書で確認する
- 1棟物件では修繕費の積立が不足していれば購入価格交渉の材料になる
- 旧耐震物件は融資と税制の両面で不利になる
- 配管・電気設備などの老朽化は更新履歴の確認で見極める
- 売却は大規模修繕や管理体制が崩れる前に検討しておく
売却のタイミングは「売ろうとしたときに考える」では間に合わないことがあります。
管理体制が崩れ始める前、大規模修繕が重なる前のタイミングに状況を整理しておきましょう。
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1棟築古マンション・アパートの売却、築古物件・訳あり物件・権利関係が複雑な物件にも対応しています。まずはお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
川口 洋平(不動産仲介事業部)
名古屋エリアを中心に、収益物件・事業用不動産(1棟アパート・1棟マンション・ビル・事業用地等)の売買仲介、貸店舗・事務所等の賃貸仲介を担当。居住用・事業用賃貸仲介から、企業不動産の売買・賃貸・管理まで幅広く経験し、物件種別や稼働状況を問わない利活用提案・課題解決を強みとする。
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