投稿日:2026.01.16 最終更新日:2026.04.08
賃貸赤字を改善する実践的な対策と、あなたの人生に合った選択
毎月の通帳残高が減り続けている。夜中にトラブルの電話が鳴る不安。「このまま保有を続けるべきか、手放すべきか」。判断できずに一人で悩んでいませんか?
実は、賃貸経営の赤字には「良い赤字」と「悪い赤字」があります。赤字の原因を正しく理解し、優先順位をつけて対策を進めれば、改善への道は開けます。また、年齢や状況によっては、売却という選択が、あなたとご家族の未来にとって最善の決断となる場合もあります。
この記事では、名古屋エリアで収益物件・事業用不動産仲介に特化したT-ESTATEが、賃貸経営の赤字の原因と実践的な対策、そして人生設計に合った選択(保有継続 vs 売却)の判断軸を解説します。
- 良い赤字と悪い赤字の見分け方
- 赤字の原因と優先順位別の対策
- やってはいけない赤字対策
- 保有継続 vs 売却の判断基準
賃貸経営の「赤字」とは?まず知っておくべき基礎知識
賃貸経営の赤字には、大きく2つの種類があります。「良い赤字」と「悪い赤字」です。まずはあなたの物件がどちらのタイプなのかを理解しましょう。
帳簿上の赤字(良い赤字)
帳簿上の赤字は、書類上は赤字だけど、実際の手元のお金は減っていない状態です。これが「良い赤字」です。
たとえば、家賃収入が年間500万円入ってきます。一方で、修繕費や管理費などで200万円、さらに「減価償却費」という項目で350万円が経費として計上されます。合計550万円の経費なので、帳簿上は50万円の赤字です。
ここで重要なのは、減価償却費は実際にお金を払っていない「紙の上だけの経費」だということです。
減価償却費とは、建物を購入したときに支払った代金を、毎年少しずつ経費として計上していく仕組みです。たとえば3,000万円の建物なら、購入時に支払い済みですが、税務上は「毎年100万円ずつ、30年かけて経費にする」というイメージです。つまり、今年お金を払ったわけではないのに、経費として認められるのです。
だから、減価償却費が大きいと書類上は赤字でも、実際には手元の現金は減っていません。むしろ損益通算で税金還付も受けられるため、長期的には資産形成につながります。
キャッシュフロー上の赤字(悪い赤字)
キャッシュフロー上の赤字は、実際の手元資金が不足している状態です。これが「悪い赤字」です。
家賃収入20万円に対し、ローン返済や修繕費などの支出が25万円なら、毎月5万円の持ち出しが発生します。通帳の残高が減り続けていないかを確認してください。通帳残高が減っているなら、これがキャッシュフロー上の赤字です。
帳簿上の赤字と違い、キャッシュフローの赤字は実際にお金を払っています。毎月貯金を取り崩し続ける状態で、たとえば月5万円の赤字が1年続けば60万円、5年で300万円の持ち出しになります。
放置すれば資金繰りが悪化し、最悪の場合は経営破綻のリスクもあります。この状態が続いているなら、早急な対策が必要です。
賃貸経営が赤字になる4つの主な原因
賃貸経営が赤字になる原因は、大きく分けて「空室」「ローン負担」「修繕費」「税金」の4つです。
1. 空室による収入減少
空室率が収益に直結します。たとえば、家賃10万円×4室のアパートが半分空室になると、年間の収入が480万円から240万円に半減します。それでもローン返済や税金は変わらないため、現金がショートする危険が高まります。
主な原因は、賃料設定が周辺相場と合っていない、募集方法が不十分、物件の魅力不足などです。
2. 重すぎるローン返済
ローン額が大きく、金利の影響が収益に直結します。家賃収入20万円に対しローン返済が30万円なら毎月10万円の赤字で、20年続けば累計2,400万円の持ち出しとなります。
ただし、少額の赤字なら「将来のための積立」と考えることもできます。
たとえば、ローン返済が家賃収入を少し上回り、毎月1万円の手出し(赤字)が出ているとします。20年間払い続けると、手出しの合計は240万円です。 しかし、20年後にローンを完済すれば、2,000万円の価値がある土地と建物が自分のものになります。
つまり、240万円の支払いで2,000万円の資産を買ったことになるため、長期的には有効な資産形成といえます。 このように、家賃収入でローンの大半を賄い、不足分を積み立てる感覚で資産を作る方法もあります。これは許容できる赤字の一例です。
3. 突発的な大規模修繕
建物のメンテナンス費用が、家賃収入を上回ってしまうパターンです。 特に、外壁塗装や屋上の防水工事などの大規模修繕は、数百万円単位の費用がかかります。
計画的に積み立てをしていれば問題ありませんが、「雨漏りして急に修理が必要になった」といった突発的な出費があると、その年の収支は一気に大赤字になります。これが原因で資金繰りがショートするケースも少なくありません。
4. 税金と元金返済の負担
「利益は出ているはずなのに、手元にお金がない」という現象の正体です。
不動産投資では、儲かった利益に対して税金がかかります。しかし、税金を支払うタイミングと、家賃が入ってくるタイミングはズレています。 また、ローンの「元金返済分」は経費になりませんが、実際には銀行に支払う現金です。
「税金」と「元金返済」のダブルパンチで、手元の現金がなくなってしまう状態です。これは黒字倒産の原因にもなり得る危険な状態です。
何から始める?赤字対策の正しい優先順位

赤字対策は優先順位をつけて実行することがポイントです。「即効性」「短期的」「中長期的」「継続的」の4段階に分けて、効果的な対策を解説します。
1. 即効性のある対策:まずは家賃と経費の見直し
費用をかけずに、今日から始められる対策です。
賃料設定の見直し
現状空室が多い場合は、まず家賃が相場とかけ離れていないか確認します。高すぎる家賃は空室の直接的な原因になるため、ポータルサイトで競合物件と比較し、高すぎれば適正水準まで下げることを検討しましょう。ただし、値下げのしすぎは収支悪化を招くため、周辺相場に基づいた範囲内で行います。
- 効果が出るまでの期間:1~3ヶ月程度
- 費用:無料(収入減というコストは発生)
管理委託料の見直し
管理委託料は毎月発生する固定費のため、数%でも見直す価値があります。多くの管理会社では月額家賃収入の3~5%程度が一般的です。もし5%を超えているなど料率が高すぎる場合は、交渉や管理会社変更で即コスト削減が期待できます。
- 効果が出るまでの期間:条件改定後、即次月から
- 費用:基本無料
2. 短期的な対策:募集力の強化とローン条件の改善
ある程度の費用をかけて、1~6ヶ月で効果を出す対策です。
写真と設備情報を充実させる
入居希望者のほとんどはインターネットで物件を探すため、情報が魅力的でなければ内見にすらつながりません。主要ポータルサイトに掲載中の物件情報を精査し、設備情報や条件を漏れなく記載して検索から漏れないようにします。掲載写真を充実させることも重要です。
- 効果が出るまでの期間:1~6ヶ月
- 費用:写真撮影に数万円程度、広告強化費用として家賃の1ヶ月分以内
ローン金利を引き下げる(借換え)
ローン金利は支出の大部分を占めるため、見直しのインパクトは絶大です。現在のローン金利より0.5%以上低い金利で借り換えできるなら検討価値ありです。残債2,000万円・残期間20年のローン金利を2.5%→2.0%に借り換えると、総返済額で約110万円減り、毎月返済額も約4,500円減少します。
- 効果が出るまでの期間:新ローン実行後、翌月以降
- 費用:事務手数料・登記費用などで50~100万円程度
返済期間を延長して月々の負担を減らす
月々の返済額を減らすことで、短期的なキャッシュフローを大幅に改善できます。
銀行に相談すれば、返済期間の延長や一定期間元金据置などの返済緩和策を取れる可能性があります。
- 効果が出るまでの期間:条件変更実行後、直ちに軽減
- 費用:条件変更手数料(数万円程度)が発生する場合あり
3. 中長期的な対策:物件価値を高めるリフォームと修繕
時間と費用はかかりますが、物件価値を根本的に高める対策です。
内装リフォームで賃料アップを目指す
時代遅れの内装や設備は、入居者に選ばれない大きな原因になります。
築古物件の内装を一新すれば、賃料アップにつながる可能性があります。ただし、リノベ費用の回収期間は一般に数年程度はかかります。
- 費用目安:1室あたり50万~200万円程度
- 効果が出るまでの期間:工事完了後の募集から
投資額を回収できるだけの家賃増・空室削減が見込めるかを慎重に見極める必要があります。
建物診断で修繕の優先順位を決める
「壊れてから直す」という場当たり的な対応は、結果的に高くつくことが多いため、計画的な修繕が重要です。
物件の劣化状況を専門業者に診断してもらい、緊急性の高い箇所とまだ先送りできる箇所を明確化することで、無駄な出費を避けられます。
- 費用目安:建物診断は数十万円程度
- 効果:突発的な大出費を防ぎ、中長期的な収支安定に寄与
4. 継続的な対策:税金対策で手残りを増やす
すべての対策と並行して、継続的に取り組むべき税金対策です。
損益通算で税金の還付を受ける
これは国が認めている正当な節税策です。
不動産所得が赤字の場合、給与所得など他の所得からその赤字分を差し引けます。確定申告で適用すれば払い過ぎた税金が還付されることもあります。
キャッシュフロー黒字+会計上赤字を作れれば、時間の経過とともに手元資金は増えていくので安心です。
青色申告で節税メリットを最大化する
青色申告には、白色申告にはない大きな節税メリットがあります。
大家業が一定規模なら青色申告を選択することで、最大65万円の所得控除と赤字の繰越控除(最大3年間)が受けられます。
- 効果が出るまでの期間:翌年の確定申告後
- 費用:税理士費用(年間10~30万円)
やってはいけない赤字対策
焦って対策を打つと逆効果になることもあります。以下のような対策は避けていただきたいものです。
大幅値下げは満室でも赤字が固定化する
空室を埋めたいばかりに家賃を大幅に下げるのは危険です。
たとえば、周辺相場が8万円のところを焦って6万円に下げてしまうと、満室になっても収支が赤字のままになる可能性があります。家賃は一度下げると、既存の入居者との公平性から元に戻すのが非常に難しくなります。
さらに、安い家賃で募集すると入居者の質が下がり、トラブルが増えるリスクもあります。短絡的な値下げは将来的な収益チャンスも逃してしまいます。適正な範囲内での段階的な調整が重要です。
審査を緩めすぎると滞納リスクが跳ね上がる
空室解消のためとはいえ、入居審査を甘くしすぎるのは大きなリスクです。
支払い能力や属性に大きな不安がある入居希望者まで無条件に受け入れてしまうと、家賃滞納やトラブルのリスクが跳ね上がります。滞納が起これば結局オーナーの持ち出しになり、法的手続きの手間や費用もかかります。
さらに、退去時の原状回復費用が回収できないケースも多く、結果的に赤字が拡大しかねません。空室期間が多少長くなっても、安定した収入が見込める入居者を選ぶことが、長期的な賃貸経営には不可欠です。
費用対効果を考えない高額リフォームは赤字を悪化させる
高額なデザインリフォームをしても、それに見合う家賃アップや入居率改善が得られなければ投資額を回収できず意味がありません。
たとえば、200万円かけて内装を一新しても、家賃が月5,000円しか上がらなければ、回収に30年以上の長期間を要します。空室期間を考慮すると、実質的には投資回収できないケースも少なくありません。
リフォームは効果が見込める箇所に絞り、予算内で行うべきです。安価で効果の高い部分改善から試すのがセオリーです。水回りのクリーニングや壁紙の張り替えなど、費用対効果の高い施策から始めましょう。
赤字が続く場合の売却判断

対策を打っても効果が出ない、改善に多額の投資が必要、管理が限界に近い――そのような場合、売却という選択が、あなたとご家族の未来にとって最善の決断となる可能性があります。
売却すべきかどうかの判断基準
赤字対策を長期間続けても改善の見込みがない場合、早めの決断が重要です。
改善のために多額の投資が必要だが投資回収の見込みが立たない、赤字補填のために貯金を取り崩し続けている、といった状況なら売却を検討すべきタイミングです。また、年齢や健康面で管理を続けるのが難しい、子どもが賃貸経営を継ぐ意思がない場合も同様です。
「今売却すれば手元に残る資金」vs「今後も赤字を補填し続けるコスト」を比較してみましょう。売却は決して「失敗の清算」だけではなく、次の人生ステージへの前向きな第一歩にもなり得ます。
赤字物件でも買い手がつく理由
「赤字=価値が無い」わけではありません。物件自体に将来性があれば、収支が悪くても購入したいという投資家は存在します。
たとえば、立地が良いのに経営努力不足で空室が多い物件なら、別のオーナーが運営すれば黒字化できると判断されれば売却は十分可能です。ローン残債があっても、売却代金で残債を一括返済すれば差額が手元に残ります。
まずはプロの査定を受けて「今の物件価値はいくらか」を正しく把握しておきましょう。
売却によって得られるもの
物件を売却すれば、まとまった現金が手元に残る可能性があります。
この資金を老後資金として活用したり、他の借入を完済して月々の支出を減らすといった選択肢が生まれます。何より、赤字物件を抱えていたときの精神的重圧から解放されるメリットは大きいものです。物件管理やクレーム対応から解放され、ご家族との時間や趣味に充てる時間が増えるでしょう。
売却は「敗退」ではなく、「次の戦略への転換」です。売却という選択肢を恐れず検討することは、賃貸オーナーにとって健全な経営判断の一環といえます。
赤字に向き合い、最善の選択をする
賃貸経営の赤字の原因と実践的な対策、そして人生設計に合った選択の判断軸を解説しました。
- 赤字には「良い赤字」と「悪い赤字」がある。通帳残高で見分ける
- 対策は優先順位をつけて実行。即効性のある対策から始める
- 大幅値下げ、審査を緩める、高額リフォームは逆効果
- 改善しない場合は、売却も前向きな選択肢
赤字対策は優先順位をつけて実行することがポイントです。即効性のある対策から始め、状況に応じて中長期の対策へと進めていくことで、改善への道は開けます。
一方で、年齢や健康状態、家族構成によっては、売却という選択が、あなたとご家族の未来にとって最善の決断となる場合もあります。
大切なのは、あなたの人生設計に合った選択をすることです。保有を続けるのか、売却するのか、どちらを選んでも、それがあなたの人生に合った選択であれば、それが正解です。
株式会社T-ESTATEは、名古屋・愛知エリアで一棟もの専門として賃貸経営をサポートしてきました。空室対策から売却まで、実務経験に基づいてサポートいたします。あなたの状況に合わせた最適な提案をいたします。まずはお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
川口 洋平(不動産仲介事業部)
名古屋エリアを中心に、収益物件・事業用不動産(1棟アパート・1棟マンション・ビル・事業用地等)の売買仲介、貸店舗・事務所等の賃貸仲介を担当。居住用・事業用賃貸仲介から、企業不動産の売買・賃貸・管理まで幅広く経験し、物件種別や稼働状況を問わない利活用提案・課題解決を強みとする。
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