投稿日:2026.01.16 最終更新日:2026.04.08
1棟マンション経営 赤字の物件は売却か保有か 判断基準と赤字改善ポイント
「毎月の収支報告書を見るたびに、ため息が出る」「大規模修繕が近づいているのに、資金が足りない」。
1棟マンション経営において、赤字や資金繰りの悪化はオーナー様にとって最も切実な悩みです。特に数千万円から億単位の借入をして経営されている場合、そのプレッシャーは計り知れません。
しかし、RC造(鉄筋コンクリート造)の1棟マンションは、法定耐用年数が47年と非常に長く、長期的な視点で収支を考えるべき資産です。一時的な赤字であれば、適切な対策で乗り切ることが十分可能です。一方で、構造的な問題を抱えている場合は、早急な軌道修正が必要となります。
ご自身の赤字が「一時的なもの」なのか、それとも「構造的なもの」なのかを冷静に見極めることが大切です。
この記事では、名古屋エリアで収益物件・事業用不動産に特化した株式会社T-ESTATEが、以下の内容を解説します。
- 「一時的な赤字」と「構造的な赤字」の見分け方
- 一時的な赤字の2つの原因と資金繰り確保の対処法
- 構造的赤字の3つの原因と対処法
- 対策を実行する前に知っておくべき2つのこと
- 対策を実行しても改善しない場合の売却判断基準
まずは適切な対策を実行し、その結果を見て「改善を続ける」のか「売却する」のかを判断する。オーナー様にとって最善の選択をするための判断材料として、本記事をお役立てください。
まず確認すべきは赤字の種類|一時的か構造的かで売却判断が変わる

1棟マンション経営において、赤字が出たからといってすぐに「失敗だ」「売らなければ」と考える必要はありません。
RC造マンションは、適切なメンテナンスを行えば長期にわたって運用可能な堅牢な建物です。
この長い運用期間の中で、一時的に収支が悪化することは決して珍しいことではありません。
まずは、ご自身の1棟マンションの赤字がどのような性質のものなのか、その正体を正しく理解することから始めましょう。
一時的な赤字の特徴|売却を急がず資金繰りで乗り切れるケース
一時的な赤字とは、一時的な出来事で赤字になっているだけで、その出来事が終われば黒字に戻る赤字のことです。
例えば、RC造マンションでは12〜15年周期で大規模修繕が必要になります。外壁塗装や屋上防水等で数百万円から数千万円の費用がかかるため、修繕積立金を取り崩しても足りず、その年だけ収支が大幅なマイナスになることがあります。
しかし、修繕工事が終われば、翌年には通常の収支に戻ります。
また、春の引越しシーズン等に退去が重なり、一時的に空室率が大きく上昇することもあります。RC造は遮音性や耐震性に優れているため、適切な募集を行えば数ヶ月で再び満室に戻る可能性が高いでしょう。
さらに、減価償却費を経費計上することで帳簿上は赤字になっていても、実際には現金が出ていかない費用ですので、手元にお金が残っていれば経営上の問題はありません。むしろ、税金が安くなる「良い赤字」と言える場合もあります。
このような一時的な赤字であれば、過度に心配する必要はありません。資金繰りを確保して乗り切ることが先決です。
構造的な赤字の特徴|保有し続けると危険な状態と考えるべきケース
一方で、早急に対策が必要なのが「構造的な赤字」です。これは毎月ずっと赤字が続いていて、何もしなければ今後も赤字が続く状態を指します。
例えば、半年以上連続して家賃収入より支出(ローン返済・経費)が多い状態が続いている。空室率が常に15〜20%を超えており、募集をかけても埋まる気配がない。家賃を下げても入居が決まらない。
このような状態が続いているなら、構造的な赤字である可能性が高いです。
構造的な赤字の恐ろしい点は、時間が解決してくれないことです。「もう少し様子を見よう」と放置すればするほど、貯金は減り続け、メンテナンスにもお金が回せなくなり、建物はどんどん古くなって資産価値が下がるという悪循環に陥ります。
「赤字でも税金が安くなるから大丈夫」と考えるオーナー様もいらっしゃいますが、これには注意が必要です。確かに税金は安くなるかもしれませんが、毎月手元のお金が減っているなら、それは資産を失っているのと同じです。帳簿上の赤字と実際のお金の減少を混同せず、構造的な赤字には早急な対策が必要です。
一時的な赤字の主な原因と対処法|売却せずに資金繰りを確保して乗り切る

ご自身の赤字が「一時的なもの」であると判断できたなら、慌てて物件を手放す必要はありません。収支が正常化するまでの期間、資金ショートを起こさないように資金繰りを確保して乗り切ることが先決です。
原因1:大規模修繕工事による突発的な支出増
RC造の1棟マンションでは12〜15年周期で大規模修繕が必要になります。外壁塗装や屋上防水等で数百万円から数千万円の費用がかかるため、修繕積立金を取り崩しても足りず、その年だけ収支が大幅なマイナスになることがあります。
修繕工事が終われば、翌年には通常の収支に戻ります。
対処法:修繕積立金や予備費を活用し、不足分は融資で対応する
まずは手元の資金で対応できるかを確認します。長期修繕計画に基づいて毎月積み立ててきた修繕積立金を充当し、足りない場合は予備費やオーナー様個人の内部留保資金を一時的に投入します。
手元資金だけでは対応が難しい場合、金融機関のリフォームローンや修繕専用ローンを活用できます。RC造マンションは耐用年数が長く、担保評価が出やすいため、比較的有利な条件で融資を受けられる可能性があります。
今回の赤字を教訓に、次回の修繕(12〜15年後)に向けて積立計画を見直すことも忘れないでください。
原因2:退去時期の重複による一時的な空室増
春の引越しシーズン等に退去が重なり、一時的に空室率が大きく上昇することがあります。
例えば30戸のマンションで5〜6戸が同時期に退去すると、その期間だけ家賃収入が大きく減少し、赤字に転落します。RC造は遮音性や耐震性に優れているため、適切な募集を行えば数ヶ月で再び満室に戻る可能性が高いでしょう。
対処法:フリーレントや初期費用減額で早期に入居付けする
短期集中で入居付けを行い、早期に収支を回復させます。入居後1〜2ヶ月分の家賃を無料にする「フリーレント」を設定すると、入居者にとっては初期費用が抑えられるため、強力な誘引材料になります。
敷金・礼金の一時的な減額や、賃貸不動産仲介会社への広告料増額も即効性があります。
構造的な赤字の主な原因と対処法|保有見直しや売却も含めた根本対策
「毎月の収支がずっとマイナス」「空室が全然埋まらない」。このような構造的な赤字に陥っている場合、小手先の対策では改善しません。まずは、なぜ赤字になっているのか、その原因を特定することから始めましょう。
原因1:慢性的な空室率の高止まり(15%以上が続く)
1棟マンションの場合、空室率が15%〜20%程度を超える状態が半年以上続いているなら、構造的な問題の可能性が高いです。
例えば30戸のマンションで5戸以上の空室が常態化しており、募集をかけても埋まらない、家賃を下げても決まらない。
このような状態は、物件の競争力そのものが失われている証拠です。
立地や設備が現代の入居者ニーズに合っていない、周辺に新築や競合物件が増えた等、市場環境の変化に対応できていない可能性が高いと言えます。
対処法:家賃やターゲットを見直し、管理会社変更も視野に入れる
周辺の競合物件を調査し、家賃が高すぎるなら適正水準まで下げる決断が必要です。
物件の立地や設備が現在の需要に合っているか見直し、ファミリー層から単身者向けや外国人向けへの転換も検討しましょう。管理会社の客付け力に不安があれば、実績のある会社への変更も視野に入れます。
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原因2:ローン返済負担が収入を圧迫している(返済比率50%超)
家賃収入に対するローン返済額の割合(返済比率)は、一般的に50%以下に抑えられていると、比較的安定した運営がしやすいとされています。
これが55%〜60%を超えると、税金や経費を払った後の手残りがほとんどなくなり、少しの空室でも赤字に転じるリスクが高まります。
さらに深刻なのは、修繕積立金が不足しており、修繕のたびに借入を繰り返しているケースです。毎月のローン返済額がどんどん積み上がり、恒常的にキャッシュフローを圧迫する構造になります。
対処法:借り換え・期間延長・固定費削減でキャッシュフローを改善する
低金利の金融機関へ借り換えを行い、同時に返済期間を延長することで月々の返済額を減らせます。
エレベーター保守点検費用や共用部の電気代等、毎月の固定費も見直します。修繕は「緊急度の高いもの」を優先し、メリハリをつけた計画に見直すことで借入増加を抑えられます。
原因3:減価償却終了後の税負担増(デッドクロス)
RC造の法定耐用年数(47年)が終了すると、経費計上できる減価償却費が減り、所得税や住民税等の税負担が急増します。
「手元に現金はないのに、税金だけが高い」というデッドクロス状態です。
さらに、ローン残債が減っていくと利息部分(経費計上可能)も減るため、減価償却と利息の両方が減少し、税負担が二重に増えます。
毎月のキャッシュフローがプラスでも、税金で持っていかれてしまい、実質的に赤字になるケースも少なくありません。
対処法:繰り上げ返済や売却タイミングを事前に計画する
減価償却が終了する時期を事前に把握し、対策を進めることが重要です。手元資金に余裕があれば繰り上げ返済で利息負担を減らし、税負担増を相殺できます。
資金に余裕がない場合は、デッドクロス発生前に売却を検討しましょう。築古でも立地や骨格に価値があれば、法人や再生投資家の需要があります。
対策や追加投資を行う前に必ず確認すべき2つのポイント

ここまで、一時的な赤字と構造的な赤字、それぞれの対策をお伝えしてきました。しかし、対策を実行する前に、必ず押さえておくべき重要なポイントがあります。
1:大規模投資をする場合は「現状売却」との比較を必ず行う
構造的な赤字を改善するため、大規模なリノベーションや設備更新を検討している方もいるでしょう。
しかし、数百万円から数千万円の追加投資をする前に、必ず立ち止まってください。投資回収に長期間を要する計画は、リスクが高くなるケースが多いため注意が必要です。
また、エリア自体の賃貸需要が落ちている場合、どんなに内装をきれいにしても**入居者が決まらない「リフォーム貧乏」**になりかねません。
大規模投資を決断する前に、「追加投資して保有し続けた場合の将来キャッシュフロー」と「今すぐ売却して手元に残る資金」を必ず比較してください。どちらが経済的に合理的かを冷静に判断することが、資産を守ることにつながります。
2:対策と並行して、売却の準備も進めておく
対策を実行しても、必ず改善するとは限りません。「もう少し様子を見よう」と判断を先延ばしにするのはリスクがあります。
建物は年々老朽化し、資産価値は下がっていきます。また、赤字運営が長く続くと決算書の評価が悪化し、いざ売却しようとした時に購入検討者がいないという事態にもなりかねません。
そのため、対策に取り組むと同時に、売却の準備も始めておくことをおすすめします。RC造の1棟マンションは、個人投資家だけでなく、法人やファンド等買い手の層が厚い資産です。「自分では改善できないが、再生ノウハウを持つプロなら買いたい」という需要も十分にあります。
売却を検討すべき3つの基準|赤字の1棟マンションを手放すタイミング
一時的な赤字、構造的な赤字、それぞれの対策をお伝えしてきました。しかし、実際に対策を実行しても状況が改善しない場合もあります。
そのような場合、無理に保有を続けるよりも、売却という選択肢を真剣に検討すべきタイミングです。以下の3つの基準に当てはまる場合は、売却を視野に入れましょう。
1:対策を実行したが、数ヶ月経っても改善の兆しが見えない
家賃を下げても空室が埋まらない、管理会社を変更しても状況が変わらない、フリーレントを設定しても反響がない。
このように、対策を実行して3〜6ヶ月経過しても収支が改善しない場合、物件の競争力そのものに問題がある可能性が高いです。
立地やエリアの需要が根本的に低下している場合、個人の努力では改善が難しく、時間とともに状況はさらに悪化していきます。
2:追加投資が必要だが、回収の見込みが立たない
大規模修繕や設備更新に数百万円から数千万円が必要だが、手元資金がない。融資を受けても投資回収までの期間が長くなり過ぎる計算になる。
さらに、残債が多すぎて返済比率を下げられない、満室になっても収支がギリギリという状態なら、追加投資はリスクが高すぎます。
このような場合、追加投資をするのではなく、現状のまま売却して損失を最小限に抑えることが賢明な判断です。
3:赤字が長期化し、保有継続が困難になっている
貯金を取り崩し続けて限界に近づいている、毎月の持ち出しが精神的に苦痛になっている、年齢や健康面で管理が困難になってきた。
このような状況では、無理に保有を続けることは、ご自身の生活を圧迫するだけでなく、将来の相続にも影響を及ぼします。もしお子様がマンション経営を継ぐ意思がない場合、赤字物件を相続させることは大きな負担となり、トラブルの元になりかねません。
人生設計を考えたとき、売却して現金化し、老後資金として確保する方が、ご自身とご家族の未来にとって最善の選択となる場合があります。
T-ESTATEでは、個人の購入検討者だけでなく、全国の法人や投資家等の独自のネットワークを常時接点をもっております。
法人は「社宅利用」や「減価償却メリット」等、個人とは異なる視点で物件を評価するため、個人には売りにくい赤字物件でも、適正価格で売却できるチャンスがあります。
まとめ|赤字の1棟マンションを「保有継続」か「売却」か判断するために
1棟マンション経営における赤字対策について解説してきました。
- 赤字には「一時的」と「構造的」の2種類がある
- それぞれに適した対策をまず実行する
- 大規模投資前は売却との比較が必須
- 対策実行後の結果で売却を判断する
- 早期の決断が損失を最小限に抑える
赤字には2種類あり、それぞれに適した対策があります。まずは対策を実行し、その結果を見て判断することが大切です。
対策を実行しても改善の兆しが見えない、追加投資の回収見込みがない、資金的・精神的に限界に達している。このような場合は、売却という選択肢を真剣に検討すべきタイミングです。
重要なのは、1人で悩まず、早い段階で専門家に相談することです。
株式会社T-ESTATEは、名古屋エリアの収益・事業用不動産に特化した不動産会社です。私たちは、単に物件を売買仲介するだけでなく、オーナー様の状況に合わせたコンサルティングを行っています。
赤字物件の収支改善のご提案から、高値売却のサポート、さらには買取まで、あらゆる選択肢の中からベストな解決策をワンストップでご提案いたします。
「改善すべきか、売るべきか」。その判断のためのシミュレーションも無料で行っております。
まずは一度、お気軽にご相談ください。オーナー様の資産を守るために、私たちが全力でサポートいたします。
この記事を書いた人
佐々木 英人(不動産仲介事業部 営業)
名古屋エリアを中心に、収益物件・事業用不動産(1棟アパート・1棟マンション・ビル・事業用地など)の売買仲介と、貸店舗・事務所など事業用不動産の賃貸仲介を担当。賃料10万円規模の賃貸から10億円超の売買まで幅広い仲介実績を持ち、不動産管理の経験も踏まえた多角的な提案を強みとする。物件状況やご意向に応じて、出口戦略まで見据えた利益最大化の提案を行う。
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